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ロバート・A・ハインライン 著、小尾芙佐 訳「夏への扉[新訳版]」

 

夏への扉[新訳版]

夏への扉[新訳版]

 

 作品自体の発表は1957年。

15年ほど前に読んだ福島正実訳が一番おなじみのものだろうがこれの発刊が1963年なので、実に56年ぶりの新訳です。

元訳でも十分に名作なのだが、今回は訳者が「アルジャーノンに花束を」で素晴らしい翻訳をした小尾芙佐による新訳なので、手を出さずにはいられない。

 

さて、この小説はSF要素が強くない。

コールドスリープとタイムマシンによるタイム・トラベルを主軸に、ガジェットとして家庭用ロボットが登場する。

主人公のダンと親友のマイケルがこの家庭用ロボットの会社を起こしたが、経営方針を巡って対立、恋人件秘書のベルの裏切りもあり会社を追い出される。

愛猫のピートと共に冷凍睡眠で30年間の眠りにつく決意をするダンだったが、直前で二人に復讐しようとして返り討ちにあい、ピートとはぐれたまま麻薬を打たれて冷凍睡眠に放り込まえる。

 

この後、未来に行ってもSF要素は追加されることなく、全体の3割と言っていい。

それでは残りはなにか。

猫です。

 

表紙にもメインで登場していることから分かるように、愛猫のピートが非常に魅力的に描写されています。

今回の新訳ではこの部分で小尾芙佐の妙技が見らます。

ピートの鳴き声を「ナアーウ」と表現してそのふりがなとして、「いーまあ?」「すーぐ!」など文脈に沿ったものを充てている。

この鳴き声としても英語としても、そして文脈としても違和感のない訳をすることで、ダンとピートがしゃべっているように見せる部分が非常に魅せられました。

 

SFの入門編として最適と言われていた本書ですが、新訳によって本来持っていた魅力が倍増し、読みやすさも増しています。

 

評価:★★★★★(一生残しておく)