須賀しのぶ「芙蓉千里」
2009年発売。
全4巻の1巻目。
第12回センスオブジェンダー賞大賞受賞作品。
舞台は明治40年。
売れっ子女郎めざして自ら「買われ」、海を越えてハルビンにやってきた少女フミ。
身の軽さと機転を買われ、女郎ならぬ芸妓として育てられたフミの翻弄される人生を描く。
最近、大戦前後の娼館をテーマにした作品に手を出している。
作者の須賀しのぶは上智の史学科出身であり、時代背景には信頼をおいている。
また、「流血女神伝シリーズ」を愛読していたこともあって、文章の相性も良い。
良くも悪くも少女小説出身とは思えないテーマで攻めてくる人だが、恋愛要素は少女漫画的である。
著者の特徴として、過酷な環境に追い込まれつつ柔軟に変化しながら時代を生きていく人物を主人公に据えることが多い。
暗くなりがちな環境を強いる場合が多いが、主人公の性格が明るく前向きであるため暗さはあまりない。
当作もこれに該当するようで、1巻はまだ人物と環境の設定にとどまっているが、2巻以降のあらすじを読むとがらっと環境が変わっているようなので、続きを読んでみるとする。