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唐辺葉介「つめたいオゾン」

 

 2014年発売。

新興レーベルの富士見L文庫の第一弾作品であるため、発売に気が付かず買い逃していた。

メディアワークス文庫から始まるライトノベル読者層と一般小説層をつなぐ目的のレーベルである。

そういった目的であれば、狭義のライトノベルレーベルに当てはまらないところばかりで書いていた唐辺葉介の起用は適当だろう。

 

「他人と感覚を共有し、やがて思考や感情も融合してしまう架空の病気、アンナ・メアリー症候群。幼少期より共有した視界によってお互いを認識していた脩一と花絵。二人が出会い、病気を宣告され向かう未来とは・・・」

 

唐辺葉介は登場人物を胸くそ悪い表現で不幸に陥れ、絶望へ向かう中で一瞬の輝き(悪い方向性であることが多い)を描写することを得意としていると感じている。

1章は脩一の生い立ちを描いている。

両親との確執はあるが、最終的には目標へ向かって前向きに進む道が示され、そこまで不幸ではない。

2章はそれと対比するように不幸にまみれた花絵の生活を描く。

家族の焼死、強姦、監禁によって脩一と出会った頃には感情が死んでいた。

最後の3章では二人が出会い、病気が進行していく様子を淡々と描写していく。

 

今作も唐辺葉介の特徴はよく出ている。

前半で登場人物を不幸に陥れ、さらに後半で真綿で首を絞めるように追い詰めていく。

彼の文書から想像される情景はモノクロかセピアであることが多い。

そのため、後半で向かっていく絶望はアメリカ映画のように、パニックになるのではない。静かに潰えていく。

 

一般小説層が最初に手を出す唐辺葉介の作品としては、特徴が良く出ていてわかりやすい今作が一番適していると思う。

そして、次は「PSYCHE」あたりに進むのがいいのではないか。

 

売れてくれたら瀬戸口廉也名義の「CARNIVAL」を是非再販してくれないだろうか。

海猫沢めろんの「左巻キ式ラストリゾート」再販してくれた星海社あたりになんとかしてほしい。

 

評価:★★★(面白い点はある)